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「The Rite of Spring 2021」

2021年1月23日 - 2021年2月20日
笠井麻衣子「百合の花の意味」2020

 ユカ・ツルノ・ギャラリーは、ティム・バーバー、狩野哲郎、笠井麻衣子、流麻二果、新田友美、ラウル・ワルヒのグループ展「The Rite of Spring 2021」を2021年1月23日(土)から2月20日(土)まで開催いたします。ウィルスの脅威と不安定な社会状況が続くなかでも、季節は巡り、長い間眠っていた春が突如として湧き起こり、生命が持つそれぞれの世界を再び燃え立たせるように、6人の作家の繊細な取り組みを通して、創造的な力が織りなす春の息吹を探求します。

 宙に浮くかのように振る舞う少女たちを頻繁に描く笠井麻衣子は、西洋絵画の歴史のなかで連綿と受継がれてきた題材に、大胆な筆跡と白地を活かして、時を超越した躍動感を生み出します。少女と天使、白鳩、白百合の花のモチーフで構成される受胎告知を扱った作品は、物語に独自の視点や解釈を取り入れながら、新たな物語を紡ぐことと絵画の関係性の本質に迫ります。
 生命の存在論的な営みとそれを取り巻く無限の世界や曖昧な認識を表現してきた新田友美は、視覚的効果としての絵画ではなく、身体的経験として広がっていく感性的で触覚的な絵画のあり方を探求しています。近年は身体表象のみならず身近な植物をモチーフとして展開しており、冬の終わりに咲き始める水仙の花は、春の気配を伝えるとともに、雪で覆われ眠っていた大地が再び生命を宿す回復の兆しでもあります。
 流麻二果の初期作品は、日常のなかですれ違う他人への興味から、直接的に関わることがない人生や暮らしへの想像を重ねるなかで生み出されたイメージが、何層もの色彩と形態を持って重ねられています。絵画や日本文化に表れる色彩に独自の視点から取り組んでいる流にとって、些細な日常に潜むまだ見えていない振動を色や光を通して共鳴させるような試みとも言えます。
 パブリック・インターベンションを通して、公共空間に引かれたあらゆる境界線を明るみに出すラウル・ワルヒは、その空間が持つ力学や文脈を一時的に書き換えるような取り組みをしてきています。様々な境界線を越えるなかで出会った出来事や経験から生み出されたパターンをプリントした布地を用い、境界を揺るがす旗や垂れ幕、多様な文化のパッチワークとしてのモビール作品を制作しています。
 身の回りの日用品や道具を用いて人間によって意味付けされてきた記号や価値、役割を解体する狩野哲郎は、人間と異なる知覚を持つ鳥や植物を内包することによって作家の意図を超えて推移する新たな環境や風景を作り出してきました。断片的な部分がいかに全体へと繋がっているのかを思考しながら、一時的なインスタレーションでありながらも一つの全体として存在する彫刻作品を追求しています。
 写真家であると共にフォトエディターやキュレーターとして知られるティム・バーバーの写真作品は、身近な風景や無造作な場面でありながら、その場に漂う空気感からどこか謎めいた物語を連想させます。写真として切り取られているような繊細な日常の瞬間をどのように一緒に生き、どうやってそこに立ち現れる物事と繋がっていくのか、物事を異なる角度から眺めることの示唆が織り交ぜられています。
 

作家プロフィール

笠井麻衣子
1983年愛知県生まれ、金沢美術工芸大学大学院修了。2008年『シェル美術賞 2008』準グランプリ受賞。主な展示に「VOCA展2016 現代美術の展望 – 新しい平面の作家たち」(上野の森美術館、東京、2016年)、「シェル美術賞 アーティスト セレクション」(新国立美術館、東京、2012年)、「第30回損保ジャパン美術財団選抜奨励展」(損保ジャパン東郷青児美術館、東京、2011年)など。

新田友美
1978年奈良県生まれ、2001年京都大学法学部卒業、2010年多摩美術大学美術大学卒業。多摩美術大学に入学する以前は米国に渡りコーコラン・カレッジ・オブ・アーツ・アンド・デザインやペンシルバニア美術アカデミーで美術を学ぶ。現在、シンガポール在住。主な展示に「Hanging Garden」(ジャパン・クリエイティブ・センター、在シンガポール日本大使館、2016年)、「Presence: Figurative Painting」(The Morris and Gwendolyn Cafritz Foundation Arts Center King Street Gallery、米メリーランド、2015年)、「Likeness: Tomomi Nitta + Karen Ann Myers」(The Athenaeum Gallery、米ヴァージニア、2012年)、など。

流麻二果
1975年大阪府生まれ。女子美術大学芸術学部絵画科洋画専攻卒。2002年文化庁新進芸術家在外研修員(アメリカ)、2004 年ポーラ美術振興財団在外研修員(アメリカ・トルコ)。主な展覧会に「Re Construction 再構築」(練馬区立美術館、東京、2020年)、「流 麻二果 – 色を追う/Tracing the Colors」ポーラ美術館、神奈川、2018年)、「高松コンテンポラリーアート・アニュアル vol.05『見えてる風景/見えない風景』」(高松市美術館 、香川、2016 年)、「VOCA 展」(上野の森美術館、東京、2000年・2006年)など。パブリックアート、ファッションブランドとのコラボレーションや、ダンスパフォーマンスの美術・衣装、建築空間の色彩監修など幅広く活動。

ラウル・ワルヒ
1980年フランクフルト生まれ。ベルリン・ヴァイセンゼー芸術大学にて彫刻を学び、ベルリン芸術大学にてオラファー・エリアソンのもとフライエ・クンスト(自由芸術)を学び、空間実験研究所では奨学生となる。これまで、ノイエ・ナショナルギャラリー(ベルリン)、ハンブルガー・バーンホフ(ベルリン)、ドレスデン美術館、アーンスベルク美術館などで作品を発表。トーキョーアーツアンドスペースやニダ・アート・コロニーやヘッセ文化財団など多くのレジデンシー・プログラムに参加するなど、国際的に活動。現在、バウハウス大学ワイマールにてパブリック・アートとニュー・アーティスティック・ストラテジーの教鞭をとっている。

狩野哲郎
1980年宮城県生まれ。2005年東京造形大学造形学部デザイン学科卒業。2007年同大学院造形研究科美術研究領域修士課程修了。近年の主な個展に、「アートみやぎ 2019」(宮城県美術館、2019年)、「A bird in the garden, a cat in the room」(在シンガポール日本大使館ジャパン・クリエイティブ・センター、シンガポール、2017年)、「芸術植物園」(愛知県美術館、愛知、2015年)、「あいまいな地図、明確なテリトリー/Abstract maps, Concrete territories」(モエレ沼公園 ガラスのピラミッド、札幌、2013年)、「純粋な標識/Clear signs, Vivid tones」(ハラ ミュージアム アーク、群馬、2012年)など。

ティム・バーバー
1979年生まれ、米アマーストで育ち現在ニューヨークを拠点に活動。写真家であると共にキュレーターとしても知られているバーバーは、「Vice Magazine」のフォトエディターとして活躍後、オンラインギャラリーとイメージアーカイブのサイト www.tinyvices.com を立ち上げ、その後のアート界に大きな影響を与えた。ファッション誌などコマーシャルの分野でも活躍し、NYで最も勢いのあるフォトグラファーのひとりとして人気を集める。
 

開催概要

ティム・バーバー、狩野哲郎、笠井麻衣子、流麻二果、新田友美、ラウル・ワルヒ
「The Rite of Spring 2021」
会期:2021年1月23日 – 2月20日
開廊時間: 火 – 土 11:00 – 18:00(*今会期中は金曜日も18時までとなります)
休廊日: 月、日、祝

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