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ファビアン・クネヒト、田村友一郎、ラウル・ワルヒ「suspense」

2020年3月7日 - 2020年4月4日
左上:ファビアン・クネヒト、still from Genitiv、2017; 右上:ラウル・ワルヒ、Eureka (Königsplatz Munich)、2018、 下:田村友一郎、suspense、2020

 ユカ・ツルノ・ギャラリーはファビアン・クネヒト、田村友一郎、ラウル・ワルヒの三人展「suspense」を2020年3月7日(土)から4月4日(土)まで開催いたします。2013年の同時期にベルリン芸術大学・空間実験研究所(オラファー・エリアソンクラス)に在籍したことから始まった三人の対話は、各々が異なる仕方で国際的に活躍しながら今日まで活発に続いています。三人の作品に共通して見られる運動や美学的な言語に焦点を当て、彼らの作品の読み直しを図ります。

 クネヒト、田村、ラウルの三人はともに、写真、映像、インスタレーション、パブリック・インターベンション、パフォーマンスなど多岐にわたる方法でアーティスとしての実践を重ねてきました。本展覧会では、空間や場所、モノや出来事に付属されてきた社会的なコードや意味、歴史といった輪郭を一旦停止させ、仮説的な反復や異化的な状態を築くことによってそこに潜む規範を揺るがし、不可視な関係性を導き出す作品を発表します。
 タイトル「suspense」−サスペンス−はジャンルとして確立されているように物語のエンディングに向かいながらも観客のうちに緊張が持続する心理状態を言いますが、一方でそれは「宙吊り状態の持続」とも言えます。三人にとってその「宙吊り状態」は、終わりない繰り返し、固定化した垂直運動、浮動的なオブジェとして、永続的に残ることのない儚い運動の軌跡として現れています。
 例えば、「展覧会」という枠組みを解体した作品を多く発表してきているファビアン・クネヒトの《Genitiv》(2017)ではベルリンのハンブルガー・バーンホフ現代美術館の窓から下降する男性が映し出され、田村友一郎の《C’s Ladder, N’s Ashbins》(2020)と《suspense》(2020)では落下のための梯子とゴミ箱、そして吊り下がる暖簾が配置され、ラウル・ワルヒのパブリック・インターベンションのシリーズ《Eureka》(2016/2018)では噴き上がったあとは地面に打ち付けられ消えていくはずの水が瞬間的に捉えられています。これらの作品はエンディングが見えながらも、その出来事に対する過程をいったん留保する、さながら空に浮き続ける運動であり、物質と非物質の空間を漂う一時性とその反復から生まれる絶え間ない出来事の再編成とも言えます。オープニングでは、ワルヒの新たなインターベンションとして《Eureka Tokyo》も発表される予定です。
 
 
作家プロフィール

ファビアン・クネヒト
1980年マクデブルク生まれ。ベルリン芸術大学とカルフォルニア芸術大学にて学ぶ。オラファー・エリアソンの空間実験研究所に2009年から2014年まで在籍し、2014年に修士号取得。2012年にはニューヨークにあるマシュー・バーニーのスタジオにてアシスタントを務める。これまでに、ザグレブ現代美術館、モスクワ・ビエンナーレ、ノイエ・ナショナルギャラリー(ベルリン)、ハンブルガー・バーンホフ(ベルリン)、帝国戦争博物館(ロンドン)、バーデン=バーデン州立美術館などドイツ国内外の美術館など、作品発表の場は多様。

田村友一郎
1977年富山県生まれ。東京藝術大学大学院映像研究科にて博士号取得。ベルリン芸術大学空間実験研究所にて客員研究員として在籍(2013-2014)。近年の主な個展に「Milky Mountain / 裏返りの山」(ゴベット・ブリュースター美術館、ニュープリマス、2019)、「叫び声/ Hell Scream」(@KCUA、京都、2018)、またグループ展には、「Asian Art Biennial」(国立台湾美術館、台中、2019)、「話しているのは誰? 現代美術に潜む文学」(国立新美術館、東京、2019)、「六本木クロッシング2019:つないでみる」(森美術館、東京)、「日産アートアワード2017」(BankART Studio NYK、横浜)、「2 or 3 Tigers」(世界文化会館(HKB)、ベルリン、2017)など国内外多数。

ラウル・ワルヒ
1980年フランクフルト生まれ。ベルリン・ヴァイセンゼー芸術大学にて彫刻を学び、ベルリン芸術大学にてオラファー・エリアソンのもとフライエ・クンスト(自由芸術)を学び、空間実験研究所では奨学生となる。これまで、ノイエ・ナショナルギャラリー(ベルリン)、ハンブルガー・バーンホフ(ベルリン)、ドレスデン美術館、アーンスベルク美術館などで作品を発表。トーキョーアーツアンドスペースやニダ・アート・コロニーやヘッセ文化財団など多くのレジデンシー・プログラムに参加するなど、国際的に活動。現在、バウハウス大学ワイマールにてパブリック・アートとニュー・アーティスティック・ストラテジーの教鞭をとっている。
 
 
開催概要

ファビアン・クネヒト、田村友一郎、ラウル・ワルヒ
「suspense」
会期:2020年3月7日 – 4月4日
開廊時間: 火 – 木、土 11:00 – 18:00、金 11:00 – 20:00
休廊日: 月、日、祝

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