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新田友美「Hanging Gardens」

2017年7月1日 - 2017年8月5日
Infinite Set 43, 2016

 ユカ・ツルノ・ギャラリーでは、新田友美の個展「Hanging Gardens」を2017年7月1日(土)から8月5日(土)まで開催いたします。2年ぶりの個展となる本展では、昨年シンガポールで発表した「Hanging Garden」(ジャパン・クリエイティブ・センター、在シンガポール日本大使館、2016年)の巡回展として、シンガポールとバビロンの空中庭園、そして人間の存在を重ね合わせた作品を発表します。

 新田友美は白いキャンバスに浮かぶ匿名的で抽象化された女性像を描いた絵画シリーズ「Infinite Set(無限集合)」を通して、刻々と変化し続ける無限集合の総体のような人間存在のあり方を一貫して表現してきました。2015年にシンガポールに拠点を移した新田は、都市国家として合理的に計画・整備され、急速に発展を遂げたシンガポールの都市のあり方にも同様なテーマを見出しています。

 タイトルの「Hanging Gardens」は、大柄の樹木や熱帯植物とコンクリートが絡まりながら共存するシンガポールの街のイメージをバビロンの空中庭園になぞらえたものです。“世界の七不思議”の一つである古代ギリシア時代のバビロンの空中庭園は、古代の高度な技術を用いて作られた階段状に庭園が広がる伝説的な建築物です。砂漠の国に嫁ぐのを嫌がった王妃を慰めるために作られたと言われており、絶えず水を引き、手入れをしなければ砂と化してしまうような創造物であったかもしれません。

 最初の印象が「空中庭園」であったと新田が語るように、シンガポールは植林を巧みに操ることで、建物の密集する都市に人工的な「緑の肺(としての庭園)」を持ちます。現代の都市化の一つであるグリーン・アーバニズムを反映している一方、1967年に当時の首相リー・クアンユーが提唱した“庭園都市”としてのシンガポールの理想像は、新たな都市国家としての存在意義を自ら作り出すための政治的パフォーマンスともいえます。

 また、「空中庭園」は、私たちの存在そのものの隠喩としても立ち現れます。私たちは、免疫によって外部から自らを隔てながら、絶え間ない細胞の生死の繰り返しによって維持されており、その営みが終わることは肉体としての死であり、物質へと帰してしまうような存在です。生命活動という過程につねに身をおきながら、「空中庭園」として生きる私たちは、自身の存在の意味や環境を自らが構築し続ける存在でもあります。

 人間の存在論的な営みと、そこに立ち昇る無限の世界や曖昧な認識の世界を長年探求してきた新田は、「空中庭園」という絶えず生み出され維持され続けなければいけないメタボリックな都市と、私たちの存在そのものを橋渡しするかのように鑑賞者を深い思考へと誘い込みます。

作家プロフィール

1978年奈良県生まれ、2001年京都大学法学部卒業、2010年多摩美術大学美術大学卒業。多摩美術大学に入学する以前は米国に渡りコーコラン・カレッジ・オブ・アーツ・アンド・デザインやペンシルバニア美術アカデミーで美術を学ぶ。現在、シンガポール在住。近年の個展に「Infinite Set 3」(Hillyer Art Space、ワシントンDC、2012年)、「Hanging Garden」(ジャパン・クリエイティブ・センター、在シンガポール日本大使館、2016年)、グループ展に「Likeness: Tomomi Nitta + Karen Ann Myers」(The Athenaeum Gallery、米ヴァージニア、2012年)、「Presence: Figurative Painting」(The Morris and Gwendolyn Cafritz Foundation Arts Center King Street Gallery、米メリーランド、2015年)などがある。

開催概要

新田友美「Hanging Gardens」
会期:2017年7月1日 – 8月5日
開廊時間: 火 – 木、土 11:00 – 18:00、金 11:00 – 20:00
休廊日: 月、日、祝
オープニングレセプション: 7月1日(土)18:00-20:00
会場: ユカ・ツルノ・ギャラリー
東京都品川区東品川1-33-10 TERRADA Art Complex 3F

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