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狩野哲郎、志村信裕「Ambient Reflexion」

2021年11月27日 - 2022年1月15日
左:狩野哲郎、Mirrored Mirage、2021; 右:志村信裕、Tender Moon、2021

 ユカ・ツルノ・ギャラリーは狩野哲郎と志村信裕の二人展『Ambient Reflexion』を2021年11月27日(土)から2022年1月15日(土)まで開催いたします。両者とも日常の身近な事物や現象を作品の素材として扱ってきており、狩野は人間ではない存在や彼らの認識する世界を想像させるインスタレーションや彫刻を、志村は記憶や歴史を喚起するような映像インスタレーションを発表してきました。本展では、二人の独立した作品の特性を互いの所与の環境として捉えることで、重なり影響し合う関係性から生まれる作品の新たなあり方が模索されます。

 狩野哲郎は他者としての鳥や植物の観察や内包を通して、人間の意図を超えて存在する風景のあり方や、人間の生活圏に生きる身近な生物の各々の知覚によって見出される世界の多様性を提示してきました。「一本のカシワの木が、多種多様なそれぞれの生物にとって変化にとんだ役割を果たしている」と提唱する生物学者フォン・ユクスキュルの「環世界」の概念をもとに制作してきた狩野は、作品の細部がある生物や存在によって知覚されることで固有性を獲得しながら、その細部がインスタレーションや彫刻作品としての全体性を生み出す複合的環境としての作品と世界の在り方を創造しています。近年は、年月を重ねてきた素材や古物、自然のなかでエイジングした彫刻、屋外でヤケや経年変化した素材を作品の一部に取り入れています。月日の経過が価値と見なされなかったり、すでに従来の機能や価値から逸脱している素材を取り入れることで、自然の力によって獲得されては変容し続ける複数的な世界認識の方法と世界観が同居しています。

 志村信裕は身の周りの事物の実写映像を様々な場所や素材に投影し、光や映像によって空間が持つ歴史や記憶を呼び起こすサイトスペシフィックな作品を多く手がけてきました。近年は、フィルムやドキュメンタリー映像の手法に取り組んだり、近代詩、民俗学、神話に着想を得たりすることで、固有の場所性に捉われず、自然現象を文学的なアプローチと近接した映像インスタレーションとして作品化してきました。とくに2019年に千葉県香取市の古民家へと制作の拠点を移し、家の周辺に広がる自然と向き合う時間が増えた志村は、自ずと過去の作家や詩人たちが試みた自然との対面に共感を寄せます。今年夏に開催されたKAAT神奈川芸術劇場での個展『游動』では、世界各地の月にまつわる神話や死生観と結びついた光や水が循環する世界観を表現するために、朧月、海月、雨、海辺の月影をモチーフとして選び、光と映像が織りなす抽象度の高い映像インスタレーションを発表しました。

 各々の独立した作品と、互いの作品を一つの環境として見立てた共作で構成される「Ambient Reflexion」は、二人展でありながらも、互いに意識し合いながら作家として成長してきた二人のある種の共存した関係性が反映されています。長時間をかけて作られてきた作家個人の制作環境や取り組みを前提としながらも、各々の作品の特性が生み出す影響を認め合いながら、またその影響による侵食や変容を受けいれることで生み出される新たな関係性を試みます。
 
 
作家プロフィール

狩野哲郎
1980年宮城県生まれ。2005年東京造形大学造形学部デザイン学科卒業。2007年同大学院造形研究科美術研究領域修士課程修了。近年の主な個展に、「あいまいな地図、明確なテリトリー/Abstract maps, Concrete territories」(モエレ沼公園 ガラスのピラミッド、札幌、2013年)など。近年の主なグループ展に、「Reborn-Art Festival 2021-22ー利他と流動性ー」(石巻市、2021年)、「アートみやぎ 2019」(宮城県美術館、2019年)、「A bird in the garden, a cat in the room」(在シンガポール日本大使館ジャパン・クリエイティブ・センター、シンガポール、2017年)、「芸術植物園」(愛知県美術館、愛知、2015年)、「想像しなおし」(福岡市美術館、福岡、2014年)など。

志村信裕
1982年東京生まれ。武蔵野美術大学大学院映像コース修了。現在、千葉県を拠点に活動。文化庁新進芸術家海外研修制度により、INALCO (Institut National des Langues et Civilisations Orientales) 客員研究員としてフランス・パリに2016年から2年間滞在。近年の主な個展に「游動」(KAAT神奈川芸術劇場、2021年)、「千葉の新進作家vol.1 志村信裕 残照」(千葉県立美術館、2019年)、「物の気」(ウォーナンブール美術館、オーストラリア、2018年)、グループ展に「生命の庭―8人の現代作家が見つけた小宇宙」(東京都庭園美術館、2020年)、「21st DOMANI・明日展」(国立新美術館、2019年)、「The world precedes the eye」(ICAシンガポール、2016年)、「六本木クロッシング2016 僕の身体、あなたの声」(森美術館、東京、2016年)など。
 
 
開催概要

狩野哲郎、志村信裕
「Ambient Reflexion」
会期:2021年11月27日 – 2022年1月15日
開廊時間: 火 – 土 11:00 – 18:00
*冬季休廊 2021年12月26日 – 2022年1月10日
休廊日: 月、日、祝

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