EXHIBITIONS
山谷佑介「KAIKOO」
ユカ・ツルノ・ギャラリーは、山谷佑介の個展『KAIKOO』を2021年10月16日(土)から 11月13日(土)まで開催いたします。本展では、横須賀の古民家の解体・改築作業を通して掘り起こされた土地や建物の歴史、そこで暮らしていた人々の痕跡、そして土やコンクリートといった物質に出会い対峙することで生まれた、土壁の立体作品や作業中に撮影された写真作品を発表します。
山谷は『Tsugi no yoru e』や『ground』など、メディア装置としての写真に様々な角度からアプローチしながら、カメラのシャッターによって切り取られる現代社会と個人の狭間に横たわる溝や欲望、熱量を意識させるような作品を発表しています。深夜の住宅街を赤外線カメラで撮影した『Into the Light』で日常の不可視な側面を写し出すことを試みた山谷は、“撮影する”という行為の可能性の幅を拡大してきました。前作の『Doors』では、写真作品をただ発表するのではなく、特殊カメラによって自身のドラム演奏を撮影すると同時にその場で印刷されるポートレート写真で空間を埋め尽くすことによって、イメージを生産する一連の流れをパフォーマンス化し、撮影下の無意識や眼差しの複雑さを浮かび上がらせました。
こうした山谷の写真表現のパフォーマティブな展開は、現実を実直に写し出すメディアである写真への尽きない興味と挑戦であり、同時に、撮影者の意図によって出来事や撮影対象がイメージの中で固定化されてしまう一方的な関係への違和感と繋がっています。自身の関心が現実世界と対峙する写真へと更に深化し、またコロナ禍で社会が変動するなか、山谷は横須賀の築82年の三棟平屋の古民家を自宅兼アトリエに改築するプロジェクトを始めました。家族、友人・知人を巻き込みながら、自身もその作業に一から加わり、土やコンクリートといったモノに直接的な形で触れたり、横須賀の土地や建物が持つ歴史やそこに暮らしていた人々の痕跡を掘り起こしたりする過程に、自身が考えてきた写真表現との類似性を見つけます。陸軍日本兵の宿舎だったという近代史の一旦を担った土地である一方で、「竣工から80年の間に繰り返されたリフォームで埋もれてきた歴史が顕にされ、特筆すべき歴史的価値のない、ありふれた昔のものたちに今一度光が当たる。受け継がれてきた歴史や伝統とは程遠い、どこにでもあるそれぞれの家の話だ。」と語る山谷は、現代社会に生きる私たちの足下に埋もれた些細でありふれた存在や歴史といったものを掘り起こし、触れ合い、そして作業や記録を通して新たな関係性を結ぼうと試みます。
山谷の表現と通底する古民家の解体・改築作業は、山谷に様々な形で人々やモノたちとの邂逅の場となりました--横須賀の土地と歴史、古民家で暮らしてきた人々、掘り出される土や伐採した植物、自らの手で加工されていく木やコンクリートなど、住居作りがもたらす物質的なモノとの出会いや対峙は、「何かしらのモノとの出会いでしか存在しない」と考える山谷の写真メディアそのものを想起させます。本展では、現代社会という同時代的な眼差しだけでなく、自らの生活の場所として目の前にある現実がいかに縦軸的に展開する時空間の交流として現れているのか、物質や時間を伴う関係性のなかで成り立つ写真のあり方を探ります。
作家プロフィール
-
1985年新潟県生まれ。立正大学文学部哲学科卒業後、外苑スタジオに勤務。その後、移住した長崎で出会った東松照明や無名の写真家との交流を通して写真を学ぶ。近年の展示に「VOCA展 2021」(上野の森美術館、2021年)、「BEYOND 2020」(KunstENhuis、アムステルダム/amana Gallery、東京/Galerie Nicolas Deman、パリ、2017年)、「Into the Light」(BOOKMARC、2017年)、「Lianzhou Foto 2016」(連州、中国、2016年)、「KYOTOGRAPHIE」(無名舎、京都、2015年)、「Yusuke Yamatani: Recent Works」 (アリソン・ブラッドリー・プロジェクツ、ニューヨーク、2015年)など。写真集・モノグラフに『ground』『RAMA LAMA DING DONG』『Doors』(ギャラリー山谷)、『Into the Light』(T&M Projects)など。
開催概要
-
山谷佑介
「KAIKOO」
会期:2021年10月16日 – 11月13日
開廊時間: 火 – 土 11:00 – 18:00
*11月4-7日 Art Week Tokyo 開催中は 10:00 – 18:00
休廊日: 月、日、祝
協力
-
濱田智成 (studio hamanari)