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笠井麻衣子「梟の眼差し」

2017年10月21日 - 2017年11月25日
百合の花の意味, 2017

 ユカ・ツルノ・ギャラリーは笠井麻衣子の個展『梟の眼差し』を2017年10月21日(土)~ 11月25日(土)まで開催いたします。2年ぶりとなる本個展では、絵画が持つ物語性を西洋絵画の伝統的モチーフを用いて探求した新作を発表します。

 笠井麻衣子は、日常の中で目にした風景をもとに自身で物語を作り上げたり、既存の物語の語られえなかった部分を独自に想像して新たな視点を導入したり、近年はとくに物語と絵画の関係性について追求しながら絵画制作を行っています。勢いのある筆触とキャンバスの余白を生かした絵画には、少女や動物、着ぐるみなど、社会的に未分化な存在がモチーフとして登場します。背景と同化するような曖昧な構図と色彩を持って表現された絵画上のイメージは、物語的でありながら抽象的な世界としても表象されています。

 本展覧会タイトル「梟の眼差し」の梟は、ギリシア神話の女神アテーナーが従えていた梟を指しています。知恵、工芸、戦略を司るアテーナーは、自己の聖なる動物として知の象徴である梟を側らに置いていたと言われています。笠井は「都市の守護女神として崇拝され、あらゆる光景を俯瞰の目で見る女神の傍らで、同じように雲の上から広い世界を眺めていたであろう梟の眼差しのように、日常とは違った角度で物事を捉えようとする試み」としてこのタイトルを採用しています。

 絵画の制作者として西欧の伝統的な題材を再考する一方で、この梟の視点は笠井が制作する上で重要な見地となっています。笠井は大和絵などに見られる俯瞰的な視点や、花鳥風月を主題とする伝統的な日本美術の観点を絵画の構図として取り入れており、題材として描かれた光景を、伝統的な絵画の永遠性ではなく、時間をともなった物語性へと導いています。

 また、今回新に登場する石膏像のモチーフは、日本で芸術を学んだ作家にとって馴染み深い存在です。近代芸術の教育の一環としてデッサンの対象でしかなかった石膏像は、西洋絵画の題材と重ね合わされた少女たちと同様に、作家にとっては身近な素材でありながら、文化的にも時空間的にも現代と切り離された出自を持っています。メディアとしても、また題材としても伝統的な対象を別角度から眺めようという笠井の試みは、時間と空間を繋ぎあわせようとする新たな物語性を持つ絵画として立ち現れ、観客に様々な読み解きを与えます。

作家プロフィール

1983年愛知県生まれ、金沢美術工芸大学大学院修了。2008年『シェル美術賞 2008』準グランプリ受賞。主な展示に『第30回損保ジャパン美術財団選抜奨励展』(損保ジャパン東郷青児美術館、2011年)、『シェル美術賞 アーティスト セレクション』(新国立美術館、2012年)、『VOCA展2016 現代美術の展望 – 新しい平面の作家たち』(上野の森美術館、2016年)。作品はピゴッチ・コレクション、髙橋コレクション、昭和シェル石油株式会社などに収蔵されている。

開催概要

笠井麻衣子「梟の眼差し」
会期:2017年10月21日 – 11月25日 * 12月9日まで会期延長
開廊時間: 火 – 木、土 11:00 – 18:00、金 11:00 – 20:00
休廊日: 月、日、祝
会場: ユカ・ツルノ・ギャラリー
東京都品川区東品川1-33-10 TERRADA Art Complex 3F

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