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上田暁子「A Walk of Broken Theatre」

2021年4月17日 - 2021年5月29日
Akiko Ueda "DÉJÀ-MAIS-VU (A Walk of Broken Theatre)", 2020
photo by Philippe De Gobert

 ユカ・ツルノ・ギャラリーは、上田暁子の個展「A Walk of Broken Theatre」を2021年4月17日(土)から5月29日(土)まで開催いたします。刻一刻と変わり続ける流動的な出来事の成り行きを絵画空間として構成することに関心を寄せてきた上田は、自身の制作過程を見返し分析することで、新たな制作方法とイメージ形成に挑戦してきました。本展では、ベルギーを拠点とするなかで培われ、制作過程そのものが絵画空間のイメージ形成に影響を与えながら、複数の時間や影響関係を内包した絵画として制作された作品を展示します。

 上田暁子は近年、キャンバス上に重ねられた自身の筆づかいや筆跡がいかに絵画を探求するための要素へと変容していくのか、自身の絵画制作過程そのものに目を向けてきました。そこから、偶発的な筆跡を辿り、イメージが発生する瞬間とそこに存在する時間そのものを反芻することでイメージの変換を重ねていく制作方法を試みています。
 とくに最新シリーズである「DÉJÀ-MAIS-VU」は、絵画上に最初に置かれた筆跡をなぞるために、リネン地キャンバスの灰色に限りなく近い色を使ってイメージが重ねられています。以前の色鮮やかな作品群と比べると描かれるイメージの抽象度があがり、制作上の過程一つ一つが織りなす空間により注意が向けられていることがわかります。上田は、このイメージ形成の過程における視覚的な感覚をフランス語のdéjà-vu(既視感)とjamais vu(未視感)を組み合わせた造語「DÉJÀ-MAIS-VU」と呼んでおり、絵画空間における筆跡やイメージがすでにそこにある見慣れたものとして立ち現われると同時に、どこか新鮮で新しいイメージが紡ぎ出されていくような両義的な意味を持っています。それは偶発的に置かれた筆致を、絵画上の層として重ねていく上田にとっては必然的な反芻を通して、偶発的に立ち現われる像へと導く方法論です。このような制作方法を上田は、その過程で展開される時間や空間、そしてそこで発生した出来事を絵画上で視覚化する実践として考えています。

 本展タイトル「A Walk of Broken Theatre」は、「DÉJÀ-MAIS-VU」シリーズの一つからきており、劇場に関連したモチーフは過去の上田の作品のなかでも登場してきています。それは空っぽの空間であり ながら、あらゆることが起こりうる出来事を内包するメタファーとして現れています。上田にとって劇場とは、建物の内部だけでなくその劇場を含む周辺環境と一体となって影響しあう場であり、出来事を通して変化し続ける生きた存在です。それは、下絵を決めずに描き出され、反芻的に拡がっていく出来事の反復を通して新たな像が紡ぎ出されいく上田の探求と実践の場としての絵画空間とも通底しています。
 
 
作家プロフィール

1983年京都市生まれ、現在ベルギー、ブリュッセル在住。2006年武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業、2020年ブリュッセル王立芸術大学絵画コース修士課程修了。2018年ポーラ美術振興財団在外研修員。主な個展に「DÉJÀ-MAIS-VU」( CENTRALE.lab 、ブリュッセル、2021年)、「絵画が画家の寝顔を見る時」(第一生命南ギャラリー、東京、2015年)、「ARKO2012/上田暁子」(大原美術館、倉敷、2012年)、「世界は大きな花束でもある」(清須市はるひ美術館、清須、2009年)、グループ展に「自動と構成」(ポーラ ミュージアム アネックス展、東京、2021年)、「Night Walk, Day Sleep」(Gallery Medium 、ブラチスラヴァ、スロヴァキア、2019年)、「ネオヴィジョン新たな広がり」(信濃美術館、長野、2017年)、「VOCA展2011」(上野の森美術館、東京、2011年)。
 
 
開催概要

上田暁子「A Walk of Broken Theatre」
会期:2021年4月17日 – 5月22日 * 5月29日まで延長
開廊時間: 火 – 土 11:00 – 18:00
休廊日: 月、日、祝

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