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中村佑子、松川朋奈「My River runs to thee それでも私の川は、あなたへと流れている」

2021年3月6日 - 2021年4月3日
左:松川朋奈 「Love Yourself 3」2018、右:中村佑子「いのちがうまれゆくおと」2021

 ユカ・ツルノ・ギャラリーは、中村佑子と松川朋奈の二人展「My River runs to thee それでも私の川は、あなたへと流れている」を2021年3月6日(土)から4月3日(土)まで開催いたします。両者とも近年は、母になった体験のなかで生まれた気づきや感性をインタビューや取材を通して探求し、中村は文章と映像で、松川は絵画として発表してきました。本展では、形を変えながらも脈々と受け継がれていく「母」を出発点に共鳴し合う二人の作品を展示します。

 ドキュメンタリーを多く手掛けてきた映画監督である中村佑子は、2020年末に出版した初の単著『マザリング 現代の母なる場所』で、自身の妊娠から出産、そして産後の子どもと共有する時間のなかで抱いた空白や虚無、孤独といった自身が乖離した感覚とともに、赤ちゃんと自他未分化した言語化できない「母」に関わる体験を語るための言葉を見つけようとします。多くの女性への取材を手がかりに、また自身が持つ記憶や母との関係を重ね合わせながら、中村は「母」に代わる言葉として、「マザリング」を使います。それは「自分や他者の痛みに敏感になり、いつ終わるともしれない計画できない時間を待ちながら過ごすという、文明が退化させてしまった他者に寄り添う感覚を取り戻すプロセス」*であり、生の起源が稀薄化された現代社会に抗うような身体感覚や時間感覚を持つ「母なる場所」の可能性へと開かれています。

 そこから、自身と共通の境遇を持つ人々との類似した記憶を元にした「病の親を持つ子どもたち」をテーマに、初のAR映像作品《サスペンデッド》をシアターコモンズ’21で発表しました。家のなかに最も身近な人の病や死を抱え込んだときの宙吊りの「生」とともに、その日常に現れる圧倒的な光や時間の感覚が子どもの視点から描かれています。本展タイトル「My River runs to thee それでも私の川は、あなたへと流れている」は本作品で引用されている、エミリー・ディキンソンの詩からきています。本展で中村は、《サスペンデッド》の一部映像と、「マザリング」を探求するにあたってその内面的な心象風景として立ち現れるような、本展の為に撮り下ろした初の写真作品を発表します。

 クロースアップした写実的な絵画で人間の内面へとアプローチする松川は、中村と同様に、同世代や自身と同じ状況を持つ女性へのインタビューを重ねてきました。そのなかで印象に残ったフレーズやシーンを、私的な事象を想起させる細部としてハイライトを当てながら再構成し、日常生活に残された行為の痕跡や仕草に表れる人間の内面や葛藤を表現しています。近年は、自身が年齢を重ねるにつれて取材対象であった同世代の「若い女性」たちが「妻」や「母」へと変化したり、「老い」を身近に感じるようになったり、女性たちが抱える不安や悲しみ、疲れ、弱さといった多様で複雑な内面の一つ一つを肯定しながら、母親と子どもの主題を多く描くようになりました。シリーズ作品《Love Yourself》(2018-)は、自身も含め、親として生きる女性が直面する重圧や社会的な偏見に押し潰されずに自身を愛する営みを思索するとともに、その願いが込められています。本展では中村の著書の表紙に使われた作品《Love Yourself 3》(2018年)とともに、「マザリング」や中村の映像作品からイメージの着想を得て制作された新作を発表します。

 3月27日(土)には二人のトークイベント(Zoom生配信、アーカイブ有)の開催を予定しております。

https://www.youtube.com/watch?v=ctMGF5Pc740

*中村佑子『マザリング 現代の母なる場所』(集英社、2020年)10頁
 
 
作家プロフィール

中村佑子
1977年東京生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科哲学専攻卒。哲学書房にて編集者を経て、テレビマンユニオン参加。映画作品に『はじまりの記憶 杉本博司』、『あえかなる部屋 内藤礼と、光たち』(HOTDOCS正式招待作品)、テレビ演出作にWOWOW「はじまりの記憶 現代美術作家 杉本博司」(国際エミー賞・アート部門ファイナルノミニー)、NHK「幻の東京計画 首都にありえた3つの夢」(ギャラクシー奨励賞受賞)、NHK「建築は知っている ランドマークから見た戦後70年」などがある。文芸誌『すばる』での長期連載を経て、2020年12月に初の単著『マザリング 現代の母なる場所』(集英社)を出版。

松川朋奈
1987年愛知県生まれ。2011年多摩美術大学絵画学科油画専攻卒業。近年の展示に「MAMコレクション011:横溝 静+松川朋奈―私たちが生きる、それぞれの時間」(2019年、森美術館、東京)、「六本木クロッシング 2016展:僕の身体、あなたの声」(森美術館、東京)、「シェルアーティストセレクション」(2013年、国立新美術館、東京)、「Artist Meets 倉敷vol.12 松川朋奈」(2016年、大原美術館、岡山)など。Asian Art Award ファイナリスト(2017年)、福沢一郎記念賞(2011年)、ホルベインスカラシップ(2010年)を受賞。作品は大原美術館、森美術館、高橋コレクション、ピゴッチコレクションなどに収蔵されている。
 
 
開催概要

中村佑子、松川朋奈
「My River runs to thee それでも私の川は、あなたへと流れている」
会期:2021年3月6日 – 4月3日
* オンライントークイベント:3月27日(土)16:00-17:00
開廊時間: 火 – 土 11:00 – 18:00(*今会期中は金曜日も18時までとなります)
休廊日: 月、日、祝

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